青森地方裁判所 平成8年(わ)102号 判決 1996年9月20日
裁判所書記官
鈴木徳夫
本籍
青森市勝田二丁目二一番
住所
同市勝田二丁目二一番一二号
金券等売買店従業員(元同店経営)
林洋三
昭和二一年三月二一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡邉清及び私選弁護人菊池至各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金四六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、青森市本町一丁目五番二号において「富士チケットプラザ」の名称で、商品券等の売買業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上金額の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 平成三年分の実際総所得金額が一億九四六〇万三二二三円であったにもかかわらず、平成四年二月一五日、同市本町一丁目六番五号所在の所轄青森税務署において、同税務署長に対し、平成三年分の総所得金額が八〇五万三七八一円で、これに対する所得税額が八三万〇二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額九二三七万五〇〇〇円と右申告税額との差額九一五四万四八〇〇円を免れ、
第二 平成四年分の実際総所得金額が一億九三三五万九一三九円であったにもかかわらず、平成五年三月一五日、前記青森税務署において、同税務署長に対し、平成四年分の総所得金額が八四三万二五四四円で、これに対する所得税額が七四万四三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、同年分の正規の所得税額九一七三万一五〇〇円と右申告税額との差額九〇九八万七二〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
以下の〔 〕内に甲、乙として番号を掲記するものは、証拠等関係カード記載の検察官請求にかかる証拠の番である。
判示全事実について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書一〇通〔乙1ないし10〕
一 鎌田智子、鎌田金栄、三浦勇一、三浦好、小泉裕子、鯨岡利男、山内孝一及び菅原義光の検察官に対する各供述調書〔甲10ないし17〕
一 大蔵事務官作成の「売上金額調査書」、「売上原価調査書」、「経費調査書」、「叶商事株式会社に対する売上高調」、「叶商事株式会社からの振込入金調」、「小泉裕子が富士チケットプラザで換金したビール券等の内訳調」、「三浦勇一が富士チケットプラザで換金したビール券等の内訳調」及び「ビール券等の受払計算調」
〔甲1ないし4、6ないし9〕
一 鯨岡利男作成の上申書〔甲5〕
一 大蔵事務官作成の「領置てん末書」〔甲18〕
判示第一の事実について
一 押収してある平成三年分の所得税の確定申告書一綴(平成八年押第一九号の一)〔甲19〕
判示第二の事実について
一 押収してある平成四年分の所得税の確定申告書一綴(同号の二)〔甲20〕
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑とを併科することとし、罰金については免れた所得税額がいずれも五〇〇万円を超えるので、情状によりいずれも同条二項を適用して免れた所得税額に相当する金額以下とし、以上は刑法(平成七年法律第九一号による改正前のもの。以下同じ。)四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金四六〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
(求刑 懲役二年及び罰金五〇〇〇万円)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 嶋原文雄)